白色のものには、白板症、扁平苔癬、アフタ性口内炎、カンジダ症などがあります。白板症は頬粘膜、歯肉、舌など広く口腔内に発症し、通常、自覚症状がなく白斑部をガーゼなどで拭っても除去できないもので、放置するとがん化する可能性がある前がん病変の一つとされています。一方、カンジダ症の急性期ではクリーム状の白斑は容易に拭い取ることができ、扁平苔癬は網目状の白色病変の周りに赤みを帯び、痛みを伴うことが多いのが特徴です。アフタ性口内炎は2~3ミリ程度の円形の潰瘍で、触ると強い痛みがあります。
赤色のものとして、紅板症、正中菱形舌炎、多形滲出性紅斑、天疱瘡そうなどがあります。紅板症は紅色肥厚症とも呼ばれ、限局性に境界明瞭な紅斑が見られます。白板症とともに前がん病変とされ悪性化の頻度は50%ともいわれます。正中菱形舌炎は舌の真ん中やや後方が赤く平滑化し、多形滲出性紅斑は口腔粘膜に広範囲に紅斑、びらん性の変化を生じます。天疱瘡は口唇、頬粘膜、舌などいずれの部位にも現れ、水疱は破れやすく、びらんを呈し疼痛を伴います。
黒色のものには、ほくろ、色素性母斑、メラニン色素沈着症は歯肉、口唇などでよく見られる病変ではありますが、硬口蓋(上あご)、上下歯肉に発生する悪性腫瘍である悪性黒色腫との鑑別が重要となります。頬粘膜をかんだ場合に見られる血腫(血豆)、歯科用金属の粘膜への溶出による色素沈着、さらに舌の表面が黒く変色する黒毛舌なども見られます。